インドの『生き物たち』 99-12

Parrys Street 1983 Madras

 マドラスは南インドの大都会の一つですが、牛車による運搬がまだ残っています。タイヤ付きの特別仕様の牛車で、かなり重い荷物でも大量に運ぶことができます。

 ただ、1999年の正月に行ってみたところ、自動車やバイクなどの交通量が爆発的に増えて、左の絵のような目抜き通りではほとんど見かけませんでした。問屋や中小の工場が密集している裏通りでは、まだまだ現役のようです。

 人力車やサイクル力車と同様、いつの日かインドの都会から姿を消す運命にあるのでしょうが、不思議なことに、インド世界には、必ず「現役」を細分化して脈々と活かすスペースがどこかに確保されているように感じます。

 それは、決して「博物館」ではないのです。

荷物運搬牛 1983 Madras

荷物運搬牛 1984 Palani
 マドラスの牛車は、力強い大型牛が曵いています。特別な品種なのか、背が高く足が長い。顔は妙に面長で、僕の知る限り南インドの他の都会ではあまり見かけたことがありません。どなたかこの品種について知ってたら教えてくださいませ。

 南インドでよくみかける一般的な荷物運搬牛。

 祭礼や巡礼の時には、神様や人間を頼もしく曵いてくれるので、人々から尊ばれています。

 マドラスの裏通りで生ゴミを食べる牛。いろいろな品種が混じっているように感じます。牡牛は重労働をしますが、雌牛はミルクを絞る以外はのんびり暮らしているようです。

 野良牛は少ないといわれていますが、都会で暮らす彼等を「放し飼い」にしているなら、「野良」と変わらないかも。日本では家畜の糞害が問題になっていますが、インドの都会に住む「野良牛」は、どのように「野を良くしてくれる」のでしょうか。

左は先月に引き続いて、マドラスの卑しい雌牛。