PICTURESQUE INDIA Vol.1 KANNIYAKUMARI ホテルからの眺め

 午前5時、外はまだ真暗なのに、やたらと騒がしい。大声でわめくような話声、真言(マントラ)朗唱、子供たちのはしゃぎ声が上方から響いてくる。僕は眠気なまこをこすりながら、宿の屋上に上ってみた。

 いるいる。屋上の東側に老若男女が鈴なりになっている。まわりの宿の屋上もテラスも黒山の人だかりだ。皆、明けゆく東の水平線をじっと見つめている。未明の漁を終えた丸木船(カットマラム)の黒い三角帆が、灰色の波間に点々と浮かんでいる。やがて曉の闇はしだいに透明感を増し、薄明の光りを受けて沖合いのロック・メモリアルが白く輝き始める。

 日の出だ。紅の光点が水平線を突き砕く。パチパチパチ、拍手が湧きおこる。大声で神様の名を叫ぶ人、口笛を思いきり鳴らしてはしゃぐ人、寺院のかん高い鐘の音、けたたましい宗教歌、そして、教会の鐘の音やコーランの朗唱までが風に吹かれて聞こえてくる。

左下に見える漁村の小さな教会をクリックすると、この地最大の教会が見れます

 ぞろぞろ、ぞろぞろ。人々は階下に降りてゆく。路上を見下ろすと、大勢の人々が岬の方へ歩いていくではないか。僕も慌ててあとについて行った。