Symphonies and Conductors (No.4)
a la carte
No.1~No.3に記載した人達以外で、これまでよく聴いてきた演奏を思いつくままに並べてみた。中には、もっと詳しく記さねばならない指揮者や、記すことが出来なかった指揮者も多くある。ここに上げなかった指揮者を決して軽視しているわけではない。エーリッヒ・クライバー、バルビローリ、ホーレンシュタイン、メンゲルベルクなどまだまだ私自身勉強不足で、断片的にしか聴いていないため記載することが出来なかったが、偉大な指揮者であることは認識している。また、現代に活躍している指揮者の方々も省略してしまったが、ご容赦を。
左から、
Argenta指揮パリ音楽院管弦楽団:Belrioz<幻想交響曲>
同演奏のステレオ盤
Argenta指揮スイスロマンド管弦楽団:Tchaikovsky No.4
フリッチャイ指揮、ベルリンフィル、Dvorak No.9<新世界>
Argenta(アルヘンタと読みます)はスペイン生まれの指揮者だが、1958年に病気のため若くして生涯を閉じてしまった。残されている録音も多くはないが、いずれも特徴のある演奏。私は妙に惹かれるものがあり、時々取り出しては聴いている。最初の<幻想交響曲>の音楽のモチーフを現代的感覚で表現したジャケット・デザインはなかなかユニーク。フリッチャイは、カラヤンやベームがドイツグラモフォン(DG)で活躍するまえに、DGに大量の録音を残した人である。この<新世界>ではカラヤンに手なずけられる前のベルリンフィルの剛直な音が聴かれる。
左から、
Cluytens指揮パリ音楽院管弦楽団:Belrioz<幻想交響曲>
Cluytens指揮ベルリンフィルハーモニー:Beethoven No.5<運命>
Pretre指揮パリ音楽院管弦楽団:Saint Saens No.3<Organ>
Julini指揮フィルハーモニア管弦楽団:Franck Symphony
クリュイタンスのフランスものは大変評価が高く、ラベルの管弦楽曲などは第一級の演奏として誰しも賛辞を惜しまないものである。このベルリオーズも、大げさにならないで、香り高い音楽として表現している。さらにクリュイタンスの演奏で忘れてはならないのが、ベルリンフィルとのベートーヴェン全曲である。カラヤンとベルリンフィルによるベートーヴェンの全曲集に先駆けて完成したクリュイタンスのものは、瑞々しい感性とその造形の確かさに感心させられる。ベルリンフィルにとって、Stereo時代を迎えて初めてのベートーヴェン全曲集で、気合いも入っている。ベートーヴェン・ファンの全ての人に聴いてもらいたい演奏である。
さて、プレートルのサンサーンスだが、これは私が中学時代に愛聴していたレコードで、いまだに細かいフレージングまで記憶している。明るい音が特徴的で、これぞフランス音楽院管弦楽団の音と当時は思ったものであった。最後に、若きジュリーニのフランクも紹介しておく。ジュリーニは、いまひとつよくわからない指揮者だ。
左から、
Neumann指揮チェコフィルハーモニー管弦楽団:Dvorak No.8
Szell指揮クリーヴランド管弦楽団:Beethoven No.5<運命>、Mozart No.41<ジュピター>
Reiner指揮ロイヤルフィルハーモニック管弦楽団:Brahms No.4
Konwitchny指揮ライプチヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団: Beethoven No.7
ドボルザークの8番は私は大変好きな曲で、いろいろな演奏家で聴いたが、結局このノイマンの演奏が一番気に入っている。典雅な演奏というのか、全ての音が収まるべき所に収まり、なおかつ抒情性に溢れている大変素晴らしい演奏であると思う。ジョージ・セルについては、本当はもっと多くの曲について紹介しなければならないのだろうが、敢えてこのベートーヴェン一曲にした。この演奏は私が中学時代に初めて聴いた<運命>で、そのせいもあって、未だに忘れられない演奏である。次のフリッツ・ライナーのブラームスは、ブラームスの4番が好きな人に是非お勧めしたい演奏。ライナーというビッグネームを迎えて、ロイヤルフィルハーモニック管弦楽団が熱演している。テンポ、音色、音楽のフレージングそして録音状態含めて、この曲に関してこれほど完璧なレコードは見当たらない。最後のコンビチュニーだが、東独時代の代表的指揮者にもかかわらず、現役時代は地味な印象であまり話題にはならなかった。しかし、このベートーヴェン(全集)やシューマンなどで聴けるドイツ音楽の本流とも言える手堅い演奏は今となっては貴重なものだ。最近CD化されて音が素晴らしく鮮明になったという評判。
左から、
Maazel指揮ベルリンフィル:Tchaikovsky no.4
Maazel指揮ウィーンフィル:Sibelius No.1
Solti指揮ウィーンフィル:Beethoven No.3<英雄>
Solti指揮ウィーンフィル:Beethoven No.5<運命>&No.7
最後は、二人のビッグネームで締め括りたいと思う。まず、マゼールの若い頃を写し取ったレコードジャケット写真をご覧願いたい。1960年にベルリンフィルと録音したチャイコフスキー4番。今聴いても、この演奏には脱帽である。同じ1960年に、ムラビンスキーがチャイコフスキーの4番~6番を録音して、これが名盤として名高いが、こと4番に関しては、このマゼール盤の方がはるかに聞き応えがある。あとで、カラヤンがベルリンフィルを指揮して入れたものも、このマゼールの演奏ほどの迫力はない。30才でベルリンフィルをこれだけドライブするのは本当に凄いとしかいいようがない。
ちなみに、マゼールが、ベルリンフィルを指揮して録音した「運命」のレコードが、日本グラモフォンのステレオ・レコード第一号だったはず。運命を録音したのは、1958年で28才のとき。ドイツグラモフォンも、いち早くマゼールに注目して、カラヤンがドイツ・グラモフォンと契約して「英雄の生涯」を録音(1959年)するより早く、ベルリンフィルのステレオ録音をマゼールの演奏で世に出したことも快挙である。
次は、同じくマゼールによるウィーンフィルとのシベリウス全集から。おなじ組合せでチャイコフスキー全集も録音している。この頃のマゼールは本当に生き生きとしていたと思う。
最後のショルティについては、残されている録音が膨大でしかも名演揃いなので選択に迷うが、ここでは、ウィーンフィルとの名高い「ニーベルングの指輪」の録音セッションの合間、1958年から1959年にかけて録音されたベートーヴェンの演奏を紹介する。いずれも力強い筋肉質の演奏で、録音当時それほど名が知られているわけではなかったショルティの力量を如実に示したものといえる。こういう演奏はいつでもCDで入手できるようにしておいて欲しいものだ。