歩様

基本的な歩様(ほよう)について書きます。
歩様とはぶっちゃけ馬の歩き方の事です。
歩様は3種類あり、各歩様の中で伸縮運動があります。


3種の歩様
3種の歩様はテレビ、洗濯機、冷蔵庫 常歩(なみあし)、速歩(はやあし)、駈歩(かけあし)と言った3種類の走り方です。
それぞれの肢の運びや動きについて説明します。

歩度(ほど)
一つの歩様(歩法)の中でも馬の歩幅を変える事で違う運動として認識されます。
その歩幅を歩度という言葉で表します。
歩幅を詰める、すなわち小股(実際は違うけどね)になる場合は「歩度を詰める」歩幅を伸ばす、すなわち大股になる場合は「歩度を伸ばす」と言います。
また、各歩様の中に「収縮」「尋常」「中間」「伸長」をいう言葉が頭に付きますが、これは歩度を指します。
この中で収縮歩度はパッサージュ(パッサージ)、ピアッフェ、ピルーエットや横運動などの馬場馬術の基本運動となります。
伸長及び収縮歩度は馬が調教されていないと出来ませんのでこれらを練習する場合は高度な訓練が入った馬で行う事が必要になります。


常歩(なみあし)

常歩は人間の動きとして歩行(歩く)動きに当たる運動です。
常歩の動きのサイクルは1.左後ろ2.左前3.右後ろ4.右前と言った4節の動きになります。
また、常歩の時の馬の頭は、常歩のリズムに合わせて上下にバランスをとってリズム良く動きます。
常歩発進の扶助は座骨と支援の脚扶助で行います。

肢の運び
@
A
B
C
○        ○

右前肢を前へ
         ○

左後ろも前へ
       ○
●          ●
右前肢着地、左前肢前へ

●          ●
左後肢着地
D
E
F
G
    ○
●          ●
躯全体が前へ
    ○
          ●
右後肢前へ
○          ○
        ●
左前肢着地
○          ○

左後肢着地へ、右前肢前へ

中間常歩(ちゅうかん なみあし)
中間常歩は中間歩度の常歩で、自然な伸びがあって快活でリズミカルな常歩です。
馬の後肢の運びは前肢の少し前になりますので、もし、前肢があったところや前肢よりも後ろに踏み込んでいた場合は支援の脚(後ろに引いた脚)で後躯の踏み込みを強くさせて、踏み込みを深くさせます。
また、頸と頭は騎手からハミを受け上下に動きます。
拳が硬いとこの動きを阻害して中間常歩が出来なくなります。
また、リズミカルに軽やかにステップを踏まないといけないので、騎手は常に全身気勢の脚と座骨による前進気勢維持の扶助を行う必要があります。


速歩(はやあし)

速歩は人間の動きとしてはジョギングのような形になります。
速歩は馬が最も早く遠くまで移動できる歩様です。
動きのサイクルは1.左後ろ-右前2.右後ろ左前と言った形で対角線上の肢が一緒に動く2節の運動です。
速歩の時の頭や頸は一定の場所に固定され動きません。
常歩から速歩への移行は停止から常歩の時と同じ扶助かもしくはもう少し強い扶助で行います。

速歩の肢の運び
@
A
B
        ○

右後肢、左後肢着地


浮上期

         ●
左後肢、右前肢着地

尋常速歩(じんじょう はやあし)
尋常速歩の速度は分速220mの速度で馬はハミを受けつつ前へ出てゆく形になります。
前進気勢の脚扶助をリズムに合わせて行い、後肢は前肢の跡を踏むような形になります。
初心者のうちはこの尋常速歩での練習が多いです。

中間速歩(ちゅうかん はやあし)
尋常速歩より歩度を伸ばし、後肢は前肢の跡の前方に踏み込む形となります。
騎手はハミ受けを外さないように軽く手綱をゆずって馬の頭が少し前へ出るようにします。
また、脚は推進の脚を使って後躯の踏み込みを深くさせてから、速歩のリズムにあわせて前進気勢の脚扶助を行ってください。
この脚をしっかり使って後躯からの強い推進を得る事が重要です。

伸長速歩(しんちょう はやあし)
中間速歩よりも更に歩度を伸ばします。
後躯はギリギリまで溜めて深く踏み込む形になりますので、後肢は前肢の蹄跡のだいぶ前方に踏み込む形になります。
頭や頸は歩幅の増大にあわせて更に伸展します。この場合、ハミ受けを外さないで鼻が前下方に向かって伸展するようにします。
脚扶助は最初は推進の脚を使い、伸長速歩に移行した後に強めの前進気勢の脚扶助をリズムに合わせて使います。
収縮速歩(しゅうしゅく はやあし)
収縮速歩はギリギリまで歩度を詰めます。
しかし、脚扶助を使って後躯に強い推進を与えて後躯からしっかり踏み込ませます。
後肢は前肢の蹄跡より後方に着地します。
また、座骨も使って後方に重心を移動し、馬の後躯を沈み込ませ肩を浮かせます。
これによって肩が軽くなるので方向転換が容易にできるようになります。
馬は後躯を沈ませて後躯で体重を支えるため、肩が浮き頸や頭が持ち上がり頸の形が美しいアーチ型(弓型)になります。この際の頸の最高点は馬の項になります。
扶助は騎手はしっかりと且つ柔らかくハミを受けて座骨と脚でしっかりと推進していきます。

収縮速歩

駈歩(かけあし)

駈歩は3種の歩様の中で最もスピードの出る走り方です。
障害馬術では標準的な速度として分速350mとされています。
駈歩は右手前駈歩と左手前駈歩の2種類があり、馬場内での運動では右手前蹄跡運動では右手前駈歩、左手前蹄跡運動では左手前駈歩と決まっております。
右手前運動の時に左手前駈歩をだしたりその逆のパターンでは「反対駈歩」と呼ばれます。

発進
駈歩の発進を行う場合は必ず速歩や常歩を半減却を使って詰めて(停止の場合も詰めた状態にする)尚且つ前進気勢を保った状態にします。そして、内方の手綱で軽く馬の顔を内側へ向け、外方は譲らない扶助をします。外方の脚を軽く引き内方の座骨と内方の前進気勢の脚と外方の支援の脚扶助を同時に使用して駈歩発進をします。
駈歩発進の際には必ず馬を詰めて(軽く収縮させる)ください。馬が伸びた状態では駈歩は出にくくなります。

左手前駈歩の肢の運び
@
A
B


右後肢着地
    ○
●        ●
左後肢、右前肢着地

        ●
右後肢離地
C
D
E
○          ○
        ●
左前肢着地
           ○

左後肢、右前肢離地


浮上期
右手前駈歩の肢の運び
@
A
B


左後肢着地
○        ○
    ●
右後肢、左前肢着地
        ○

左後肢離地
C
D
E
       ○
●          ●
右前肢着地

           ●
右後肢、左前肢離地


浮上期 

尋常駈歩(じんじょう かけあし)
尋常駈歩は尋常速歩と同じ条件が適用されます。
尋常駈歩での1歩は1馬身程度前進します。
尋常駈歩の維持は騎手はリラックスした状態で、手綱は譲らないでコンタクトを保ちつつ内方の座骨と内方の脚で前進気勢を維持します。

中間駈歩(ちゅうかん かけあし)
これも中間速歩と同じ条件が適用されます。
尋常駈歩に比べて踏み込みが深い分、1歩のストロークが伸びます。
中間駈歩の維持は尋常駈歩に比べて強めの推進をかけるようにします。

伸長駈歩(しんちょう かけあし)
伸長速歩同様、更に深い踏み込みになります。
伸長駈歩を行う場合、脚と座骨で強く推進扶助を与えて拳はハミとのコンタクトを保ったまま軽く譲ります。
そうする事で馬は頭部が軽く伸展し、脚と座骨の扶助によって後躯から深く踏み込んで強い推進を見せます。
収縮駈歩(しゅうしゅく かけあし)
収縮速歩同様、後躯に体重を掛けて沈み込ませて肩を浮かせるような感覚になります。
頭部の形も項を最高点としたアーチ型になります。
収縮駈歩は歩幅が短くなってテンポが増大します。
収縮駈歩の場合、内方姿勢をしっかりとってリズムを保ち、後躯からの推進で前上方へ体重が抜けるようにします。

後退

後退を行う場合、左右の手綱を交互に軽く制御するようにして同時に軽く前進気勢の脚を使用します。
そして後退を始めたらすぐに脚を引いて馬の腰がぶれないように脚で腰を誘導します。
後退の足の運びは対角線上の肢が交互に下がります。
また、後退の際には馬が肢を引きずるようにしてはいけません。

後退時の肢の運び
@
A
B
○          ○
●          ●
停止
           ○

右前肢、左後肢 後ろへ
○              ○
    ●      ●
着地
C
D
E
○          
           ●
左前肢、右後肢 後ろへ
    ○      ○
●               ●
着地
○          ○
●          ●
停止

踏歩変換(とうほ へんかん)

駈歩には手前があると言う事を既にお話してあります。
右手前蹄跡運動の時は右手前駈歩、左手前蹄跡運動の時は左手前駈歩と言うことです。
では、右手前運動から左手前運動に変わった時に駈歩の手前はどうなるのかと言うと、モチロン手前を変えなければいけません。
その事についてちょいと触れます。

単純踏歩変換
馬場内で大きくS字カーブの運動を行っていると仮定します。
最初の半円は左旋回、後の半円は右旋回です。
最初、左手前駈歩ですので騎手は左内方姿勢をとっています。
左旋回から右旋回に変わる直前で常歩に落として2〜3歩常歩をしてから右手前駈歩で発進し、右旋回を行います。
このように左手前駈歩→右手前駈歩や右手前駈歩→左手前駈歩といった駈歩の手前をスイッチする際に2〜3歩常歩を入れる方法です。
単純踏歩変換の練習は最初は駈歩から速歩に落として10歩くらいで反対手前駈歩でスタートするといった感じで練習してみると良いです。
そして、段階的に速歩の歩数を少なくして5歩くらいでスタートできるようになったら常歩に落としてみる。と言った感じですね。
踏歩変換は駈歩の手前を換えるわけですから、内方姿勢の変換になるわけです。
この単純踏歩変換でスムーズな内方姿勢のスイッチを覚えてください。

踏歩変換
単純踏歩変換は常歩を入れて手前を換えますが、踏歩変換は常歩を入れずに駈歩のままで手前を換えます。
単純踏歩変換の場合と同じく、S字カーブの例えで説明するとまず左手前駈歩で左旋回してきます。S字コース中央で手前を換えるわけですが、直前で馬を収縮状態に持っていき、左旋回から右旋回に移るタイミングで騎手は左内方姿勢から右内方姿勢にスムーズに姿勢を換えて、右座骨と右内方脚を使い馬の駈歩の手前を換えます。
この時、ムリに手綱を強く引いたりすると馬がハミに反抗して引っかかる事がありますので注意します。
あくまでも拳はソフトに、馬とのコンタクトを失わないように左から右(右から左)へ移行します。

更に収縮駈歩で後躯がしっかりと沈んだ状態で行うと、駈歩の浮上期に踏歩変換が行われます。
これを空中踏歩変換(フライング・チェンジ)と呼んだりします。
また、障害のコースで左手前で入って障害飛越後に右手前に行く場合、障害飛越中に騎手は内方姿勢を入れ替えて空中で踏歩変換させます。これもフライング・チェンジと呼んだりします。

また、訓練が進むにつれて4歩駈歩したら踏歩変換してまた4歩で踏歩変換と言った具合に4歩毎の踏歩変換を始めとして更に高度になると1歩毎、すなわち歩毎踏歩変換が行えるようになります。
歩毎を行っている走り方はスキップしているような感じになります。


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