フィプリゾがここを訪れてから暫しの時が過ぎた。
この度の冥王が計画。
私見ではあるが・・・・「好かん」これにつきる。誇り高き魔族が王ならばゴミ相手にあのような手段を用いるべきではない・・・。
だが、部下が独自で調べてきた報告に依れば、つい先だっての魔王様が分身の滅び。あれはそのゴミの手によると言うものだった!!
そのような馬鹿な事があるだろうか?
かつての王ではないとはいうものの、それでも我らよりも強き王を滅ぼしたと言う。倒したのでもなく!このようなことは捨て置けぬ。
私はすぐさま部下に命じてそのゴミのことを調べさせた。
結果は―――。
魔力容量は人にしては異常なほど大なれども、所詮は人。とのことであった。だが、私を驚愕させたものは、その者、彼の方のお力を使役するということであった。
なんとした事!
なれば微かであれ、王が滅ぼされた事も信じなくてはならなくなった。復活直後の不完全なる王では、彼の方のお力を受け止める事など荷が勝ちすぎていらしたのだろう。不遜な考えであるとは思うのだが。
私は、また、すぐさま冥王と、かの者の動向を逐一報告するよう命じていた。冥王の計画が上手く運ぶか興味もあったが、何より、幾許かの心もとなさが私の上に去来していたからだ。
だが、この時すでに私は彼の者に氷のように冷たく焼けつくような執着を持ち始めていたのかもしれぬ。
たかが、一人の人間をここまで気にする事は初めてであった為なのか、今となっては定かではない・・・・。
その後、私の危惧は刻々と現実となっていった。
裏切り者とは言え、旧来の腹心の一人、ガーヴが滅び、フィブリゾさえも消滅してしまったのだ。全ては彼の者が関わっている。こうなればもう、ゴミとはいえまい。
部下から一通りの報告を受けた私は間髪置かず我が事を起すを決めた。
冥王や魔竜王が仇を討とうというのではない。
単に我が方と神族との力の差が僅かでもある今の内に少しでも事を進めておこうと考えたからだ。
そして、我らが王にお許しをいただき、他の腹心達にもそのように伝えた。
だが、獣王や海王の協力などは望めまい。海王はあのとおりの性情ゆえ足元を掬われかねぬし、唯一マシな獣王は、ただ想いつづけた者を失って全てに絶望したままだった。
何より、私自身が助力などというものを望んではいなかった。我が計略は自身の手で完遂する。それが我が誇り、引いては望みに繋がるのだ。
だが、しかして現実は・・・・。