PICTURESQUE INDIA Vol.1 KANNIYAKUMARI 

Sri Devi Kanniyakumari クマリ女神

 奥殿内の絵を描いていたらブラーミン(僧侶)が手招きしている。なんと柵の中に入って御本尊のクマリ女神を描いてくれというのだ!

 僕はどう見ても外国人(よくネパール人やチベット人に間違えられるが)、しかも異教徒である。本来なら奥殿に入ることすら許されない。まさか、むこうから描いてくれと頼まれるとは思ってもみなかった。

 アグレッシブに考えれば、失礼のない限り、スケッチならばどんな寺院の本尊も描くことができるかもしれない。写真では不可能なことである。

 ひたすら描く。ヒンドゥーの神様をこんなに間近に見たのは初めてだ。でも、灯明の明かりだけの暗がりなのでディティールまでは描けなかった。

 しかも、参拝者が次々とやってきて、ブラーミンは大忙し。プージャ(儀礼)をやる度に視界が遮られ、灯明の油や汗が飛び散り、耳元でけたたましい鐘が鳴らされる。振り返ると、人々の真剣な祈りの視線と異物を見るような驚きの視線が入り混じっていた。

クマリ女神の前で祈るナヒーン