私の目の前で起きている、思わぬ急な展開にかなりびっくりしながら、私はその場に
立ちすくしてしまった。
少しの間、硬直。
案の定、アメリアもゼルも、こちらに気づいてないらしく、2人の世界をつくっている・・・
おいおいおいおいおいおいおい。
ーなんか、私とんでもないシーンを目撃しちゃった?
それでもなんとか動けるようになった私は、とりあえず近くの茂みに隠れることにして、
2人の様子をそっと伺う。
ーしかし、アメリアもこんな夜中に逢い引きとは・・なかなかやるなぁ〜。
感心している場合ではないと思いつつも、このまま出て行くわけにもいかず、やり場に困る私。
これって、世間一般では、のぞき・・とかいうのだろうか?
いや、声をかけたのに(?)気づかなかった2人が悪い!!たぶん!
とりあえず自分で納得すると、また2人の方を見てしまう・・。
別に、これがのぞきだろうと、この状況を楽しんでいるわけでは決してない(お願い信じて)。
言うなれば・・そう、乙女の恥じらいというやつである。(深くは追求しないでね)
「私、ずっと前からあなたのことが・・」
ー好き。まっ、まぁね、アメリアがゼルのことをいつも気にしてたのは素振りで
私も分かってたけど・・。
アメリアはそう言うと、そのままきつく抱きしめた。
だ、大胆〜。この子こんなことするタイプだったっけ?そういや関係ないが
胸もでかかったわよね。でもアメリアのそのしぐさは色っぽいとかいうより、
かわいらしものだった。赤くなって下を向いている・・。アメリアらしいというべきか。
さて、お次はゼルが答える番だけど、もうここまでくれば答えは・・
「・・すまん」
アメリアとは対照的に、いたってクールなゼルの返事。
ー・・・えっ?あれっ?違うの?てっきり両想いだとばかり・・
ゼルは抱きついていたアメリアの両肩を手で押し出す感じで離れる。
アメリアも、きょとんしてゼルを見つめている。
「アメリア、お前には悪いが、俺はお前をそんな風に見たことはない。
今もそんな風には思えない。悪いな」
さらりと突き放したような言い方。・・冷たい。そりゃゼルはいつもクールだけど、
こんな時まで・・。というかいつもにましてさらに冷たい。
しかし、自分から告白したのだって初めてだっただろうアメリはの方は大丈夫だろうか。
ふとそちらを見るとやはり、アメリアは下を向いている。ショック、だよね・・。
「俺から見れば、お前さんはまだまだお子様だ。仲間以上、ましてや恋愛の対象なんて思えない。
・・しかし、お前のことだ、俺なんかよりいい男は、そのうち向こうの方からやってくるさ」
ーかちん。
アメリアは下を向いたまま、ゼルの言葉を聞いている。・・泣いているのだろうか。
ーこ〜い〜つ〜は〜!!おい、こらゼルガディス!なんちゅーことをストレートにさらりと言うのだ。
ほんと何様のつもりよ、無神経にもほどがある!こいつは女心の一つも分かってなんかありゃしない。
アメリアの気持ち考えたら・・だいたいあんたになんでそこまで・・。わーわーぎゃーぎゃー。
私は心の中で騒ぎまくる。
「分かりました。」
・・・しかし、そんな私を知ってか知らずか(いや知らないだろうが)顔をあげ、てっきり泣いている
のだとばかり思っていた肝心のアメリアの声は、なぜか明るかった。
「気持ちに答えれなくてすまんな。」
ゼルの声もさっきよりは心持ちやさしい気がする・・。あれっ?
「いえ、そんなことないです。私もちゃんと自分の気持ち伝えれることができたし、
ゼルガディスさんの気持ちも分かったし・・。それだけで結構すっきりしましたから。
あっごめんなさい、こんなとまで呼び出しちゃって。今日は・・ありがとうございました。」
「・・・・」
ー・・・強いなこの子は。
本心なんだろう。私がアメリアの立場だったらこんなセリフ言えない。一晩中、泣いちゃうのでは
ないだろうか。なのにアメリアは・・。
ー私が馬鹿だった。
ゼルはそんなアメリアの性格をとっくに気づいていて、あんなセリフを言ったのだろう。
真っ直ぐ自分を好きと言ってくれる彼女に、情けとか、妙な中途半端な気遣いとかではなく、
自分の気持ちをはっきり言うことで、彼女の誠意に答えたのだ。
・・・不器用なくせに。
でも、やっぱりひどい言い方だったぞ。だけどアメリアの方もちゃっとそれが分かって・・。
な〜んだ、結局一番子供だったのは私だったんだ。この時ばかりは
2人がずっと大人っぽく見えたのだった。
続く!
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