トントン。
軽く扉をノックしてみる。
ガチャ・・
「ああ?なんだ、お前か」
ームカ
「なっなんだとは失礼ね、かわいい女の子つかまえて」
沈黙。
ギギ・・
「ま、待っちなさいよ!」
何も言わず無言でドアを締めようとしたゼルをひっ捕まえる。
ゼルは何も言わないが口元が笑っていた。
ーちっ、絶対遊ばれてる、私!
もう、やめよう。こういうやつなんだゼルは。
「なんなんだよ、一体」
「あっ、あのね、今日ちょっと付合ってくれない!」
よし、言った!我ながら自然だ!!
「・・・・・なにいばってるんだ?お前」
「っと、とにかく、街に行くの!いいからついて来て。」
「・・ああ」
なんとか、外に連れ出すことに成功した私。
「何しに行くんだ?ガウリイの旦那や、アメリアには声かけなくていいのか?」
「ん?うん、いいの。あんたに用事があるんだから」
「用事?」
「ええ、はい、これ持って。」
そういって、私は持っていった例のズタ袋をゼルに渡す。ジャラリ・・金貨の音、
そっしてずっしりと重い重量感。
「おい、もしかしてお前・・またやったのか。」
「えへ。ばれたぁ〜」
舌をぺろっと出して笑う。
「はぁ〜、つくづくお前もあきないな。そんなに盗賊どもをいたぶるのは楽しいか?」
「ひ、ひどいわゼル〜。あなたまで、そんなこと言うの!ゼルだけは私の乙女ごころを
分かってくれると思ったのにぃぃ〜。」
私は”よよよ・・”と言わんばかりに泣きまねをして見せる。
「そんなのを分かるつもりはないが。」
しかし、それをあっさりとかわすゼル。
ーっち、演技までつけて”うるうる”をやったのに。ノリの悪い・・。
「いいからいいから。文句言わずさっさと歩く!」
「しかし、なんでこんなことに俺が付き合わされないといけないいんだ。別に俺で
なくても、ガウリイの旦那とか・・」
「いいじゃない、たまには。ガウリイに言うとうるさいのよねぇ。いろいろと」
「そりゃ、誰だって盗賊いじめを良く思うやつなんていないだろうさ。」
「特にあいつはねぇ〜、保護者だかなんだか、いちいちうるさいから。」
「保護者ね。じゃぁアメリアに・・」
「あんた、女の子に持たせる気?」
「しるかぁぁ!お前の荷物だろうがこれはっ!」
「だ〜か〜ら〜、女の子に持たせるぐらいなら、はじめからあんたが持ちなさいよ」
「・・お前な、いいかげんその性格なんとかしろよ・・。」
「なんない」
語尾にハートマークをつけて、にっと笑う。
「うん?なんかそういえば今日ゼル、よくしゃべるわよねぇ〜。」
「知るか」
「な〜に〜よっ、実はデートみたいで、うれしいくせに。」
「なっ、なんで俺が・・。だいたい両替屋にいくのにデートもなにも・・」
「えっ何?ゼルってもしかして雰囲気だのシチュエーションだの、気にするんだぁ〜。
以外とロマンチストだったりするんだね、このこの!」
「・・・一人でやってろ」
ゼルはスタスタと一人で行ってしまう。
ちょっと遊びすぎちゃったかな・・。う〜ん、怒っちゃったかなゼル。
「はい、しめて120万」
両替屋のおじちゃん。やさしそうな普通のおっちゃんなのだが、客が小柄な私と
(どう見ても子供?)、外で待っている白いフードに包まれた、怪しさ大爆発(笑い)
のゼルのせいなのか、ヤバイ金じゃなかろうと疑っている目。まぁ、こんなこと
大きな街にいくとザラなのだけど、田舎町だから。
子供が(失礼な!)大金を持ち歩くというのは抵抗があるのかもしれない。
「ありがとー。」
私はお金を受け取り、いちおう礼を言う。
「あっ、そうそう。最近、街道のあたりで盗賊団が頻繁に出るらしいから気を付けなよ。」
おっちゃんの親切な忠告に、私も答える。
「ええ、ありがとう。」
・・・決して自分が一人でその盗賊団を壊滅させ、このお金がそいつらの物だったなんて
口が裂けても言えない。
だいたい、ここに持ってきたのは、金貨などで、お宝のほんの一部にすぎない。
もっと高いマジックアイテムなんかは専門の店に持っていって売りつけなければならない。
まぁ、旅費を考えるなら、今はこれぐらいあれば十分だろう。
「お待たせ、さ、宿に戻りましょ。」
「ああ」
ぶっきらぼうな返事。声のトーンも低い・・。
「何、まだ怒ってるの?」
「・・・・」
ゼルは無言で歩いて行く。
「ごめん。」
素直にあやまる。調子にのって遊びすぎた私が悪いのだから・・。
ゼルの足が止まり、こちらを振りかえる。
「・・・おい、ちょっと宿に帰る前に話したい事がある」
えっ?
「うん」
私は、ゼルの後をついて歩く。
ー話って、なんだろう。
続く!
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