夕暮れ間近、目的の町へ着いた。待ち合わせに遅れずに済みそうだ。下手をすれば二、三日は遅れるかもしれないと覚悟していた。
町に入り、わき目も振らずある家を目指す。もう来ているだろう。連絡を取ったのは三日前だ。その時はここより一つ手前の町にいると言っていたから。
一応ノックをして、中にいるかどうかを確かめる。待たずとも中から走ってくる音が聞こえた。ばたんっ、と勢い良く開くドア。
「ゼルガディスさん! お久しぶりですねっ」
相変わらずの元気の良さに苦笑した。どうやら変わりないらしい。
「久しぶりだな、アメリア。どうやら元気でやっていたようだな」
「それはもう! ゼルガディスさんもお元気そうですね」
「ああ。親父さんも元気か?」
ずいぶん前だ。彼女の父親が病気になり、それを治す薬草を取りに行ったのが、彼女と知り合うきっかけだった。
伝承やサーガによくある話だ。薬草の生えている場所が危険な地形で、誰も取りに行けなかったのだ。
それに俺が挑戦し、見事手に入れられたという訳だ。
薬草を城に持って行った日にアメリアと会い、それからこうしてちょくちょく会うようになっていった。何故彼女が俺に会いたがるのか、薄々わかっていたが、そ知らぬフリを続けている。仮にも一国の王女だ。身分違いもはなはだしい。
「立ち話もなんですから、中に入って話しましょうか」
促されて家に入る。暖炉がついている部屋の中は暖かかった。何の感動もなかった一人旅がウソのようなにぎやかさに、どこかほっとした。
――御伽噺 伍 に続く。
稿了 平成十一年二月十一日木曜日
改稿 平成十二年二月二十九日火曜日