御伽噺 陸

 

 

 がたがたがたがた。

 暇潰しの為に持ち歩いていた本から顔を上げる。

「吹雪…………か」

 夜になって風が強くなり、雪も降り出したらしい。これは当分町から出られそうにない。雪の中を歩くのは、あまり嬉しくない。当分はこの町に足止めか。……アメリアが喜びそうだ。

 点けていたランプを消して、ベッドに潜りこんだ。がたがた鳴る窓が気になるが、うるさいほどではない。その音を子守唄代わりにして、眠りに落ちていった。

 

 

――御伽噺 漆 に続く。

稿了 平成十一年二月十一日木曜日

稿了 平成十二年二月二十九日火曜日


      陸    

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