もっと強く生きられる? きっと夢は叶う?

#3 獣将軍リディス・その2


ぎっ!
きぃぃぃぃんっっ!!
剣と剣が交差する。そのまま、力勝負に出る二人。
持久力ならゼルガディスの方が強いはずなのだが、どういうわけか彼は『そいつ』に押されまくっている。
「く・・・・・・ぅ・・・」
「フン・・・。弱いな」
す、と目を細め、ぽつりとつぶやく。
「烈閃槍(エルメキア・ランス)!!」
リナの放った、魔力増幅(ブースト)つきの烈閃槍が『そいつ』に向かう! 
あの日とはいえ、魔力増幅さえついていれば、初級の魔法ぐらいは使えるのだ。
・・・まあ、いつものより少〜し威力が落ちているが。
だが、そいつに烈閃槍が届く前に。
「魔皇霊斬〈アストラル・ヴァイン〉」
ヴィン・・・。
ほのかに、赤い光を灯す、『そいつ』の剣。余裕で、光の槍を斬る。
そして、右手をリナに向け、一言。
「邪魔だ。爆裂陣〈メガ・ブランド〉」
どぉぉぉおおぉぉおんっっ!!!
「きゃあああ!!」
「リナ!!」
『そいつ』の放った魔法で、まともに吹き飛ばされるリナ。
「リ・・・」
「動くな」
倒れたリナへ近寄ろうとしたゼルガディスの首筋に、ひたりっと冷たい感触が走る。
「動けばこの首・・・・・・。ぽろりと・・・・・・・・・落ちる・・・」
闇よりも、さらに深い、暗い、声。ハッタリなんかじゃない・・・・・・本気だ。
ゼルガディスが本能的にそう感じると、全身に緊張が行き渡った。
「安心しろ。あの小娘は死んではいない」
「・・・・・・!」
うしろで、フン、とせせら笑う声。
「そんなに・・・・・・心配・・・か? ゼルガディス・グレイワーズ。あの小猿が」
「・・・・・・・・・・・・。ああ。俺にとってリナは・・・・・・『憧れ』だからな」
「・・・・・・・・・ほう? なら問うが・・・・・・あの小娘が、お前と同じ異形の姿だとしたら・・・・・・どうする?」
ポツッ・・・・・・ポツポツッ・・・・・・・・・ザァ──・・・・・・。
雨が降り始め、そこにいる全てのモノに冷たい飛沫をかける。
「・・・・・・たとえ、あいつがどんな姿をしていても・・・・・・リナは、リナだ。それ以外の何者でもない」
「・・・・・・・・・・・・」
『そいつ』は剣を突きつけたまま沈黙する。それを破ったのは・・・・・・。
「う・・・・・・」
リナの呻き声。そして身を起こそうとする音。
「フン。上出来だ・・・・・・見事だぞ・・・!! 褒美をやろう、ゼルガディス・グレイワーズ!!」
言って、剣に力を入れる! まずい! ゼルガディスにもリナにも、剣の一撃を止めることはできない!!
「やっやめてぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
リナの悲痛な絶叫が、雨の音と混じり、消える。
刹那。
「リャアァァ!!」
ごっ!! ずしゃぁぁ!!
鈍い音。どこかで聞いたことのあるような、元気な掛け声。
「え・・・・・・?」
反射的に反らした目を、もう一度元の位置に戻す。
そこにいたのは。
倒れ伏した『そいつ』と。首から少し血を流しているゼルガディス。
そして。
黒髪碧眼の、少女。
『アメリア!?』
ゼルガディスとリナの声が、見事にハモった。

ザァー・・・・・・。
降り続ける、冷たい雨の中。瞬時にして体制を立て直す『そいつ』
「そこまでです!! 獣将軍(ジェネラル)リディス!!」 
「なっ!?」
リナが思わぬ発言に声を上げる。
上に獣がつくというのは、それは獣王(グレーター・ビースト)、ゼラス・メタリオムの支配下にあること
を指している。だが、リナは以前こう聞いた。
獣王は、将軍と神官にわけるはずだった全ての力を、獣神官だけに与えた、と。
なら・・・・・・・・・・・・このリディスというのは・・・・・・?
「私のため! 正義のため! 愛と友情のため! 母さんのため! 
それからえーと・・・・・・祖国セイルーンのために! あなたを成敗します!!」
言うだけ言って、びしぃっ!! といつもの決めポーズ。だが、どこかに違和感を感じる。
「フン・・・・・・やる気が失せたな・・・」
『そいつ』・・・・・・リディスはそう呟いて、剣を鞘に納める。
「また会おう! ゼルガディス!!」
その言葉が終わるか終わらないうちに、リディスの姿が消える。
「あ、お待ちなさい! 悪の権化!!」
アメリアが叫ぶが、雨音と共にかき消される。
フン。
リナはリディスの、そんな囁きを聞いたような気がした。
「むぅ〜。逃げられちゃいました〜」
ぷぅっと頬を膨らませるアメリア。
「アメリア! リナに回復呪文を!!」
ゼルガディスが、リナに駆け寄りながらそう言った。
「大丈夫よ。こんなの、治療(リカバリィ)くらいで治るわ」
リナはそう言って、呪文を唱える。
「もしや・・・・・・ゼルガディス様に、リナ様ですか?」
ミョーな発言をしたのは・・・・・・アメリアだった。
「おい、アメリア・・・・・・。頭でも打ったか?」
「やっぱ、木の上から落ちた時に・・・かしらね。ねえ、ところでガウリイは?」
「・・・・・・・・・あの〜失礼ですけどお歳は・・・?」
アメリアが頬に一筋の汗を流しつつ、リナに問う。
「はあ? 何言ってんのよ。あたしはもう19でしょ?」
当たり前だ、とでもいいたそうな顔。
それをまじまじとアメリアは見つめ、やがて納得のいった表情を浮かべると、小さく会釈をした。
「自己紹介が遅れました。
私は、現セイルーン女王陛下、アメリア・ウィル・テスラ・セイルーンが娘。
セイルーン第一王女及び第一王位継承者、アミエラ・レェル・ディア・セイルーンと申します」
・・・・・・・・・・・・。
沈黙後。
「アメ、リア・・・・・・の子供・・・?」
「はい」
「アミエラ・・・・・・?」
「はい」
リナとゼルガディスが呆然とする。それに追い打ちをかけるがごとく。
「お待ち申しておりました。過去よりの来訪者。リナ様、ゼルガディス様。
母があなた方を、セイルーンまでお連れしろとのことです。ご同行願います」
アメリア・・・・・・いや、アミエラは、にっこりと笑ってそう告げた。
雨はいつの間にか止み、灰色の雲の切れ目から、太陽の光が覗いていた。
 

                               #3・了



浅島 美悠様よりのコメント

いやぁ〜。あたしは自分の出したオリキャラで、リディスが一番気に入ってますわ。
理由・・・・・・ってーか。冷静なタイプが好みなもんで、ですわ。(だからゼル君らぶらぶなんですわ)
まだいますわ〜オリキャラ。あと一人か二人くらい・・・かな? ですわ。
では。
     
                           Miyu Asazima


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