「全軍魔法シフト! レベル・アルファ!」
「魔法砲兵団は右翼へ! 急げ!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「なんか・・・ヒマだね・・・」
「あ、ああ・・・」
約束の三日目、セイルーンの郊外にて。俺とリナはすることがなくなっていた。
いや、リディスが来ればそういう事もないだろーが・・・・・・。
「こんなんじゃ・・・三日間兵士の特訓やってた時の方がよかったわね・・・」
「リナ様、ゼルガディス様」
後ろから声がした。
「アミエラ・・・どうしたの?」
「いえ・・・。リナ様達の援護を、と思いまして・・・・・・」
言って、にらみつけるように前方──セイルーンの街を見据える。
両の拳が震えている。
「怖いか・・・?」
「・・・・・・・・・ちがうって言ったら、ウソになりますね・・・」
俺の問いに、苦笑しながら答える。
「でも、ここで怖がっていても何にもなんないし、正義じゃありませんから」
「・・・・・・そーいえばアミエラ。あなた魔法は使える?」
ふと思い出したように、今度はリナが聞いてきた。
「はい。精霊魔術と黒魔術を。でも、巫女としてはまだまだ半人前で・・・。
復活(リザレクション)とか、高位の白魔術はちょっと・・・・・・」
えへへ、と軽く笑って舌を出す。その動作は、アメリアに似ていた。
『リディス様、もうそろそろ・・・』
「ああ。わかっている」
そのセイルーンより少し離れた木の上に、リディスはいた。
「久しぶりに、楽しい戦になりそうだ──」
フン。
片手を上につき出し、印を組む。混沌の言葉(カオス・ワーズ)が口から漏れる。
「天を翔ける聖なる存在 我に集いて翼と成せ」
背に、光が集まる。
「飛封翔翼(レイ・リアネル)」
ばさぁ・・・。
赤い。血のように真っ赤な翼が、リディスの背に生える。
「フン!」
笑みを張り付けたまま、飛び立つ。
「! 来ます!」
アミエラが叫ぶ。
「優しき流れたゆとう水 輝き燃える赤き炎
永遠を吹き過ぎゆく風 母なる存在無限の大地
総ての力在るものは 我に従え 我の意 赴くままに」
上か!
同時だった。
「散れーーーーー!!!」
俺が叫んだのと。
「天輪(アルティメット)」
奴の呪文が炸裂したのは。
ごあっ!
白い光が、俺の傍をかする!
どぉぉぉおおおぉぉお!!
「きゃっ!」
「くっ!」
アミエラとリナが、衝撃に思わず尻餅をつく。
「大丈夫か! 二人とも!」
「このくらいで、へたるあたしじゃないわよ!」
「右に同じく、です!」
俺の大声につられて、叫び返す二人。
「フン・・・どうした。怖じ気づいたのか?」
──聞きたくない声が、真上から聞こえた。
フワリと舞い降りる影。
真っ赤な翼の生えた・・・・・・天使・・・?
「・・・・・・随分派手なごとーじょーじゃない。見かけによらず目立ち屋なのね」
リナがぱんぱんと埃を払いつつ、リディスに言い放つ。
「そうか? 私にとっては普通だが」
リナの挑発にも乗らず、ひょいと肩をすくめ・・・・・・・・・俺を睨む。
「フン・・・。小猿と仲良くしていたか? ゼルガディス」
「小猿じゃぬわぁぁぁぁぁいぃぃぃぃ!!」
「リ、リナ様落ち着いて!!」
じたじたと暴れるリナを、アミエラが押さえている。
そんなことなど気にもせず・・・・・・いや、無視を決め込んでいる、と言った方がいいか・・・。
リディスが髪をかき上げる
「レイン。小猿と王女の相手を」
『リディス様! 危険です! お一人で・・・・・・』
「平気だ」
どこからともなく響く声。
『・・・・・・わかりました。ご武運を!』
言ってまもなく、リディスの剣に光が集まる。
光が収まり、二十歳前後の男が姿を現した。剣に化けていた魔族か!
「リナ・インバース覚悟!!」
「・・・・・・できないのよ! 簡単には!」
男がリナに向かって魔力球を放つ!
ずごぉぉおんっ!!
「リナっ!」
俺がリナに駆け寄ろうとして──
ひゅっ!
「っちぃ!」
ガギィィィィンっ!!
振り下ろされたリディスの剣を、自分のブロード・ソードで受け止める!
こいつっ・・・・・・もう一本持ってたのか・・・!
「お前の腕・・・・・・試させてもらうぞ!」
ギギっ・・・・・・。
「くっ・・・」
重いっ・・・!!
思わず弾き、間合いを取る。
戦いの火蓋は、切って落とされた。
#9・了
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